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【WEB連載】「私のピアサポート!」2026.4月号

  • 執筆者の写真: 北海道ピアサポート協会
    北海道ピアサポート協会
  • 4月7日
  • 読了時間: 3分

  

【WEB連載】「私のピアサポート!」2026.4月号

今回の投稿者:かおりんさん


題 :おばちゃんの紙袋

氏名:かおりん

所属:ピアスクール・メンバー生

居住:札幌市


私は以前、食品加工を行う就労継続支援A型に通所していた時期があります。内容は「食品を作りオリジナルのパッケージに入れて販売する」というもの。扱う食品は1つでも様々な工程があります。正確さが必要なもの、とにかく根気がいるもの、目立たないけれど味の決め手となる地味なもの、スーパーで買う時には考えなかったような“裏側”が垣間見え、実際に手を動かして作る作業に触れられたことは貴重な体験だったと今でも時々思い出します。


就労A型には様々な利用者の方がいました。精神の方が多かったですが、耳が不自由な方や身体の方、難病の方もいらっしゃいました。個性もまたいろいろで「頑固一徹こだわり派」「段取り効率至上主義派」「とにかくマイペース派」等など。そんな中で印象的だったのが「私だってやりたい派」の(一見すると)ワガママおばちゃんのことです。


おばちゃんは気が強めで手先が不自由な方でした。おそらく「気が強い」ように映った姿はおばちゃんが先天的な障害や病気による闘病を経て“生き抜くために身に着けたやり方”だったのかなと今では思ったりしています。


ある日おばちゃんの「私だってやりたい」発動! それはお店のオリジナル紙袋の作成でした。パッケージは商品の顔、綺麗であることにこしたことはありません。みんなもやってるし単調な作業より面白そうに見えたのでしょう、おばちゃんは「今日は紙袋がやりたい」と言いました。奥の方へ静かに集まるスタッフ。手の不自由なおばちゃんは正確に紙袋を作ることは難しい。「申し訳ないけれど辞退してもらおう」とスタッフは判断したようで、できるだけ遠回しにおばちゃんへそれを伝えようとしました。そこで私の出番です(?)。半ばスタッフの声を押しとどめるように「私がおばちゃんと一緒にやります。制作したものはお手数ですが検品お願いします」とスタッフの方に伝えました。


みんなやってるし面白そう、だから自分もやってみたい。


私にはおばちゃんの動機がとても自然なものに思えました。そして(今にして思えば随分と上から目線ですが)やらせてあげたいと思ったのです。おばちゃんと私、2人での紙袋作りがはじまりました。一つ目、時間はかかるものの予想以上に綺麗な仕上がり。しかし「これならいける!」と思ったのもつかの間、徐々に作業に飽きたおばちゃんの紙袋は明らかに雑になっていきました。


「おばちゃん、あのさ…」

「え? ちゃんとやったよ?」

「そうだけどさ、さっきはもっと綺麗だったじゃん」

「……」

「おばちゃんはやれば出来るんだよ。苦手なところは仕方ないよ。でも、手抜きはしちゃ駄目だよ」

そんな短いやり取りの後、おばちゃんは少し考え自分で作った紙袋の仕分けを始め、明らかに雑なものをゴミ箱にぽいっと捨てました。そして気を取り直してゆっくりと、でもできるだけ丁寧に紙袋を折りはじめました。


「それだよ、それ! めっちゃ綺麗!」


正直、おばちゃんが頑張って丁寧に追った紙袋も手先の器用な人の作るクオリティには届かない。けれどパッと見なら十分販売に耐えられるレベルだと私は感じました。“やりたい人”より“得意な人”がやれば「生産性」は上がるでしょう。けれど就労継続支援の役割とは“やりたい人”の思いを軽く扱わないこと、その人の中にある“やりたい思い”を引き出すことではないでしょうか? もしもおばちゃんに会ったなら私はまた言うと思います。「おばちゃんさ、一緒に紙袋折ろうよ」。





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